2017.09.11

Suicaだけで6400万枚 −−− 日本で普及する非接触型ICカードとは

2016年10月に新型のiPhoneが、JR東日本のSuicaに対応して話題になりました。そこで、Suicaに代表される非接触型のICカードについて簡単に説明しましょう。

首都圏ではSuicaやPasmo、近畿圏ではICOCAなどの名称で非接触型ICカードが利用されています。小銭がいらない、改札口で待たされない、定期券やクレジットカード機能も併用できる、買い物の決済に利用できるなど、大変便利です。

非接触ICカードは、利用者だけではなく、鉄道会社にとっても恩恵があります。ラッシュアワーに対応する改札業務の高速化と効率化、売上げ管理のシステム化、公平な運賃負担(キセル乗車の防止)が実現するなど、そのメリットは大きいです。
このため、JR東日本のSuicaだけでも発行枚数が6400万枚に迫る(2017年3月末に6,398万枚;JR東日本発表)勢いです。

【動作の仕組み】

このように普及している非接触型のICカード。一体どのような仕組みで動作しているのでしょうか。

カードにはソニーが開発した「FeliCa」の技術が用いられています。中にはICチップがあり、そのまわりを渦巻き状のコイルが囲んでいます。カードを改札機などのカードリーダー部分にかざすと、そこから出ている電波を受信し、コイルがアンテナとして作動して弱い電流が発生し、ICを起動します。そしてICに埋め込まれたプログラムが動作し、ICに記憶されている乗車駅情報や定期券情報、残高情報などを返信し、また最新の状態に書き換えます。

このように、カードは記憶装置付きの無線機のように動作します。コイルを通じて電流が発生するため、電池が不要ですし、磁気カードのように近くに強い磁石があると情報が失われてしまう心配もありません。もちろん、こうした情報は暗号化されていて、流出する心配はほとんどありません。

【日本はここでもガラパゴス?】

日本ではすっかり定着しているFeliCa技術によるICカードは、残念ながら日本以外では香港やインドネシアのジャカルタなどアジアの交通機関の一部で採用されている程度に過ぎません。世界標準はMifare(マイフェア)と呼ばれる規格で、ISO/IEC14443TypeAとして標準化されています。近隣諸国ではソウル、北京の公共交通機関もこちらの方式が採用されています。

シンガポールの地下鉄で使用されている非接触型ICカード
(導入当初はFeliCa形式だったが、その後Mifare形式に変更された)

こうなってしまった最大の理由はカード1枚あたりのコストにあると言われています。FeliCaは、日本の殺人的なラッシュアワーの処理スピードに対応するために、ICの動作周波数を高めるなど、性能を上げた結果、1枚あたりのコストが高くなっています。一方、Mifareは処理スピードはFeliCaには劣るものの、コストは低いために普及しやすいのです。

【広がる非接触ICカードの用途】

非接触ICカードは、交通系だけでなく、利便性と安全性を活かして、楽天Edy、nanaco、WAONなどの電子マネーとしても幅広く採用されています。さらに、学生証や社員証にも使われるなど、用途が広がっています。

最近では、1枚のSuicaをオフィスの入退出記録と業務交通費精算に使うなど、面倒なバックオフィス業務を自動化する例も出てきています。今後は業務領域での活用が進むでしょう。

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